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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

豪華な昼食?

                    ≪十月三十日≫    ―壱―


旅に出て、下着一枚で眠れることなんて、ほとんどなかった事なのだが、ギ

リシャの来てこうして、白い新鮮なシーツに包まって眠る日が続くと、なん

だかホッとして心地よいものだ。

その上、子供の頃から憧れていた、二段ベッドの上段で眠れることも嬉しか

った。

ベッドからの上がり降りの時、体操の真似事をしたりしている自分に気が付

くと、心にちょっぴり余裕が出てきたんだなあと思ったりもしています。

今朝早く、旅行者がまた一人来て、ベッドが全部塞がってしまいました。

空は晴れわたっている。

夜になると、外の冷え込みを表すかのように、窓ガラスには薄っすらと、水

滴が光っている。


今日も、大使館の訪問から、一日が始まった。

残念ながら、玲子ちゃん宛てに一通着ていただけで、ガッカリしながらシン

タグマ広場に戻り、文房具屋に飛び込んだ。

旅の記録を残す、そんなノートが欲しかったのだ。

荷物になるだけなのに・・・・・・と、思いながらも・・・・。

青いカバーの分厚いノートを、90DR(≒720円 二日分の宿泊費・・・・だ)に

て購入することに・・・・踏切ってしまった。

高い買い物かどうか、一概には言えないことなのだが・・・。

日本からの、緊急援助に甘えてしまっているのかも知れない。

もう二度と来ることが出来ないかも知れないヨーロッパ。

少しくらいの、甘えは許して欲しいと今は、願っています。

もう一人の自分が言います。

     「何も、今買わなくても良い様なノートじゃん・・・・。」

     「立派なノートを買わなければ、旅の記録を残せないこともない

      だろうに・・・・。」

     「まあ良いか、一ヶ月暇をつぶすんだから、このくらいの贅

      沢・・・。」

                      
                    *

シンタグマのカフェで、地中海の太陽を浴び、コーヒーを啜りながら手紙を

一通書き留めた後、会長を訪ねることにした。

       俺「こんにちわ!」

子供達は眠っている様子。

     奥さん「あらッ、いらっしゃい。」

       俺「眠ってるんですか?」

      会長「今眠ったところだよ。子供連れの旅なんて、骨が折れる

        よ。ずっとホテルに缶詰状態なんだから・・・・。」

会長は、旅の原稿を出版社に発信する仕事を持っていたので、子供せいばか

りではないだろうが、実際あまりホテルから出る機会はない様子。

特に奥さんは、ここまで来て、子供のことで自由に外出できないことを、非

常に残念がっているようだ。

       「ギリシャは、全く退屈なところだ・・・・。」とか

       「結婚したら、こうした旅は出来ないな・・・。」など

愚痴をこぼしながら、笑っている会長。

また宿が変わったことなど・・・しばらく雑談して、「宿に戻ります。」と

切り出すと、良い機会と捉えたのか、和智さんも一緒にホテルを出ると言い

出して、奥さんと子供を残して外出することになってしまった。

奥さんには、悪いことをしてしまったようで・・・・。

                        *

モナスティラキのバザールは、和智さんが宿泊しているホテルからすぐのと

ころにある。

バザールを覗いてみることにした。

一緒に歩いてみて、初めて気が付いたことだが、このバザール奥が深い。

今まで見てきた、倍も三倍もあるようだ。

       和智さん「これから行くヨーロッパは、アテネの三倍は物価

           が高いから、覚悟しておいた方が良いよ。」

不気味な忠告である。

          俺「そんなに物価が高いんですか?」

       和智さん「しゃれになんないよ。」

          俺「・・・・・・・。」

       和智さん「美智子へでも行こうか。」

          俺「そうですね。」

       和智さん「あれ依頼、ずっと食事はホテルの中だけだったか

           ら。」

          俺「原稿で、忙しいんですか?」

       和智さん「そうでもないけどね。」

美智子に入ると、日本人の姿が多く見られ、満席に近い状況だった。

やっとテーブルを確保。

やってきたウエーターに注文する。

       和智さん「オジヤとラーメン。」

          俺「一緒で・・・。」

とにかく、この店で一番安い食事だ。

常に、繁盛しているのか、店の奥はただ今改造中。

日本から大工を調達したのか、日本人らしい大工が一人、退屈そうにタバコ

をふかしているのが見て取れた。

         俺「日本から大工を呼んでいるんですかね。」

      和智さん「そうかもな。座敷でも造ってんじゃないの。」

隣のテーブルを見ると、日本の商社マンらしい若者五人が、優雅な夕食を囲

んでいる。

      商社マン「ねー!明日もやるの?」

     ウエーター「明日は、日曜日ですから閉めますけど、ご予約があ

          れば夜だけですけど、ご要望であれば開けますけ

          ど?」

      商社マン「・・・・・・。」

     ウエーター「どうしますか?」

      商社マン「そうね。じゃあ、予約しとくわ!7人ね!え~~~

          と、夜の八時で良い??」

     ウエーター「いつもの通りで良いですね。」

      商社マン「じゃあ、頼むわ!」

なんとも豪勢な会話ではないか。

      和智さん「俺達には、一生彼らのような旅は出来ないな!」

         俺「旅人じゃないかも知れないですよ。」

      和智さん「・・・・そうか。」

ラーメン(80DR≒640円 宿泊費一泊分)は、肉類とか野菜などがふんだんに入

っていて、なかなか美味い。

オジヤ(40DR≒320円)は、熱くて味わって食べてる場合ではないほど・・・熱

い。

日本らしい食事は、本当に嬉しいことなのだが、これでは金が続かない。

      和智さん「小平君も日本に帰るらしいよ。」

         俺「残るんじゃあなかったんですか?」

      和智さん「最初はそういうつもりだったけど、冬のヨーロッパ

          はつらいかもと思い直したみたいだよ。残るのは東川

          君だけかな。あっ、テッシンが少しいるみたいだけ

          ど、彼も金が続かないだろう。東川君を除いて、全員

          今年中に日本だな。」

笑った。

         俺「和智さんは、これからどうするんですか?」

      和智さん「俺は家族を、バンコックまで送って、そこで家族を

          日本行きの飛行機に乗せて、俺はフィリピンに渡っ

          て、十一月いっぱいまで原稿の仕事をしてから、日本

          に戻る予定さ。」

         俺「奥さんは一緒に行かないんですか?」

      和智さん「一緒に行動したいらしいんだけど、子供が五月蝿く

          て仕事になんないと、諦めさせたんだ。」

         俺「可愛そうに。」

      和智さん「そう言うなよ。ところで、来年の二月から四月にか

          けて、二冊の本を出すことになっているから、また知

          らせるよ。」

         俺「そうですか。」

      和智さん「まだ、渡辺君から連絡がないんだよ。マラリアにや

          られて、どこかで静養していると言う話と、今月終わ

          りか来月初めには、こちらに到着する予定だと言う連

          絡が、誰かがキャッチしたらしいんだよ。それ以来、

          なんの連絡もないから・・・。一応、大使館には彼宛

          にメモを残しておいたから、到着したら東川君のとこ

          ろに連絡が行くはずだから、もしアテネに着いた

          ら・・・、着かなくても、何らかの連絡があったら、
 
          一度手紙でもくれよ。」

         俺「良いですよ!」

渡辺君だけは、依然として行方不明なのだ。

二人目の肝炎犠牲者となっている可能性は強い。

日本にUターンするにしても、大使館宛に連絡があっても良いはずなのだ

が・・・・。

心配・・・・・・だ。

                     *

和智さんと、NIKIS通りで別れた後、その足でジョセフ・ハウスへ立ち寄る

が、あいにく”テッシン”しか居らず、「楡家の人々」(上巻)と言う本だ

け、返してもらってジョセフを出た。

この本は、日本大使館で貸し出していた本らしく、裏の方の数人の名前が書

かれている。

どういう経由で、俺まで回ってきたのか、定かではないが・・・・。

「ISH」に戻り、シャワー室に入る。

中は、トイレと一緒になっていて、狭い部屋にトイレとシャワー室が、薄い

カーテンによって仕切られているだけだった。

シャワーとトイレが二つずつ備え付けられている。

とにかく、狭い。

シャワー室といえ、ウオーター・バケット(受け皿)だけの広さと考えてもら

って良い。

  「コインを入れて、10分ほど待つとお湯が出てきます。」

そう書かれてあるが、コインを入れても、いっこうに熱いお湯は出てこな

い。

仕方なく、半ばふるえながら冷水を浴びる。

秋深まる、冬を迎えようかというヨーロッパでだ。

アテネに入っても、シャワーだけには全く良い思い出がない。

夏ならまだしも・・・・・もう、冬を迎えようとしているのにだ。


               ≪今日の家計簿≫

               記録帳・・・・・・・・90DR(≒720円)

               手紙6通・・・・・・・48DR(≒384円)

               部屋代・・・・・・・・50DR(≒400円)

               昼食・・・・・・・・・140DR(1120円)

               焼き栗・・・・・・・・20DR(≒160円)

               夕食・・・・・・・・・14DR(≒112円)

               ビスケット・・・・・・13DR(≒104円)

               シャワー・・・・・・・10DR(≒80円)

                    合計・・・・399DR(≒3192円)


       *今日は昼食が豪華だったのと、記録帳などを購入してしま

        ったため、予算が二日分となってしまった。

        明日からは、引き締めていかないと・・・・。



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